朝のとある生理現象について


 朝というには遅すぎるが、日が空の中天にかかるまでにはまだ少し時間がある、微妙な時間帯。
 あんたまだ寝てるの?と呆れを隠さぬ表情で自室へと踏み入ってきたアイリーンを前に、ロベルトは眠りを妨げられた苛立ちなど忘れて呆けたようにパチパチと目を瞬かせた。

「……え?えぇ?ちょ、待、……プリンセス!?な、何でここに……!え、ここ、俺の部屋じゃ…………う、あ、あ゛ぁーっ!もう、と、とにかく一度カジノの方に行ってて下さい!ホントにちょっとの間でいいんで!!スミマセン、でもマジですぐに行きますから!!」

 そう叫びはするものの、ロベルトはアイリーンを無理に追い出そうとはせず、飽く迄もベッドの中から叫ぶのみである。

 ホントにすぐですから、絶対、絶対待ってて下さいね!!

 半ば懇願するようなその言葉を最後に、気を利かせたディーラーによるアイリーンの初めてのロベルト宅(といってもカジノの一室だが)訪問はものの数秒で終わりを告げた。

「ベッドから出もせずに、何なのかしらアイツ」

 急に押しかけたとはいえ失礼じゃない、と不服そうに唇を尖らせるアイリーンの言葉にディーラーはすぐ合点がいった。
 まずい、やってしまった。オーナーが彼女を追い出すなんてと思ったが、そういうことか。
 今日の同行が終わった後は覚悟しておかなければ、という彼の読み通り、その日帰ってきたロベルトはカジノの扉を蹴り開けるなり客がいるのも構わず怒鳴り散らした。

 同じモノを持っているくせに、朝の事情も察せないのかと。





(テメェは俺にプリンセスの前で処理しろってのか!!それとも何だ!?俺はこの歳でもう枯れてそうだとでも言いてぇのかよ!!!)