アラロス  ライル×アイリーン



「え、せんせ……」
「ライルだ、と言っているでしょう」
「ライル、今、ここでするの?」
「何か問題でも?」
「問題っていうか、早急すぎるわよ!先生はもうちょっと場所とか、雰囲気とか、そういうこと考える人だと思ってたんだけど!?」
「ライル、です。場所も状況も考えていますよ。今まさに婚約した、という恋人同士が、相手の男の私室に2人きりでいる。十分でしょう?」
「全ッ然十分じゃないわよ。婚約ですって?その恋人の親への挨拶もそこそこに自分の部屋に連れ込んだってのによく言うわ。それに、私室って言っても私がいるのはライルが普段仕事してる机の上よ!?」
「少し特殊なシチュエーションの方がクる、という男は大勢いるでしょうねぇ」
「そういう事聞いてるんじゃないわよ!」
「仕方がないでしょう?王のご希望に早急にお答えするには、今の時期が1番なんですから」
「はぁ?お父様の希望って……」
「先程謁見室で仰っていたのを、お嬢様も聞いていたでしょう?」
「ちょ、まさか、それって……」
「十月十日と言いますし、それまでは待っていて頂かねばなりませんが、なるべく早くお見せできるよう私も頑張らせて頂きますよ。幸い排卵日は昨日だったようですし、受精する確立は高い。タイミングとしては最高です」
「は、はいら……っ!!……な、んで……何で、ライルが、そんなこと知ってるのよーーー!!!」





(お嬢様のことなら、何だって存じ上げていますよ?私は、お嬢様の“家庭教師”ですから)

アラロス  ライル→アイリーン



『可愛いからといって油断したら、やられてしまいますから注意して下さい』

 初めての戦闘訓練で、そう忠告したのは自分だった筈だ。

「ねぇ先生、いいでしょう?……お願いよ」

 王座に腰を掛け優雅に足を組んだ元生徒はわざとらしく懐かしい呼び名を使って強請ってくる。既に見慣れたものとなったその姿を仰ぎ見ながら、ふと昔を思い出して己を哂った。

「……ええ、勿論です。女王陛下」

 油断したのは、どちらだ。

 そう内心で呟いたが、いや、とすぐさまそれを打ち消した。
 油断などせずともやられていたのだ。例えどんなに警戒し、抗おうとしても……きっと、いつかは。





(今でも時折思うのです。貴女のその言葉を聞くのが、褥の中であったならと)

ハトアリ  ペーター×アリス



「ああ、愛していますよ、僕のアリス!貴女のためならルールなんて瑣末なことは関係ありません。各勢力のトップの首を今すぐここに並べることだってしてみせます!ねぇ、ちゃんと分かってくれてます?僕のこの清らかな愛を!!」

「うざい。ホントうざい。……っちょっと、近寄らないでよね。ていうか触んないで。視界に入るな」

「ふふ、相変わらず照れ屋さんなんですから……。いつになったら素直に愛してるって言ってくれるんでしょうね」

「はっ!アンタの胸の時計をユリウスが直すことになったら考えてやるわよ」

「!!それって……僕が死ぬまで、ずっと一緒に居てくれるってことですよね!!ああ、嬉しいです。僕は感激しました!!あなたが、僕に、プロポーズしてくれるなんて……!!!すみません、本当なら男の僕が言うべきことだったのに……。もしかして、ずっと待っていてくれたんですか?僕がプロポーズするのを……。ああっ、貴女の気持ちを汲んで差し上げることができなかった不甲斐無い僕を許して下さい!その代わり、貴女のことは必ず幸せにしてみせますから!!勿論、子供のことも大事にします!ふふっ、何匹がいいでしょうね……なるべく沢山欲しいなぁ。1匹目はやっぱりメスがいいでしょうか?きっと貴女に似て素晴らしく愛らしい白兎が産まれますよ!あ、そうだ、式のことなんですが……」





(アンタのそのポジティブさが、冗談でも何でもなく本気でうざいって言ってんのよ)