クリエン ジャスティン×シエラ
真白な顔にゆっくりと手を伸ばす。
死化粧の施された顔は寒々しいほどに美しく、その表情は穏やかで。無理を言って着させた葬儀には到底相応しいとはいえない煌びやかな蒼のドレスは、やはり彼女に似合っていた。
「…………シエラ」
幾ら此岸から呼ぼうと、もう応えることのない彼岸の人。
するりと撫ぜれば、頬の白粉が名残惜しげに濃灰の手袋にその色を移した。
「…………ジャスティン様」
「ああ……、分かっている」
背後で控えていた部下に窘めるような響きでもって名を呼ばれ、棺から身を引く。周囲の反対を振り切って強引に参列した葬儀だ。これ以上足止めをする訳にもいかない。
遠ざかる棺を見送り、目を伏せる。鼓膜を震わせるのは沈痛なばかりの啜り泣き。
(くだらない、退屈だと、散々馬鹿にしたはずだったが……)
やはり再びお前にその姿をさせるのは、煩わしくも賑やかな社交の場でありたかった。
(お前はあいつのために散ると、分かっていたはずなのに)
クリエン ミハエル×シエラ
「ねぇ、君って愚かだよね」
暗い部屋。血塗れの腕を掴み、呪詛のように囁く。
「それに汚くて醜い」
「……ミハエル、やめて。痛い」
「知らないよ。そんなの」
汚くて、醜くて、愚かなシエラ。
真実を教えてあげる度に顔を歪め、更に醜くなる。それが嬉しくて醜いともう一度囁けばシエラはやはり醜く顔を歪めた。
「もっと、汚れちゃいなよ」
こんなところで死に掛けていないで、最期までみっともなくもがいて、苦しんで。
もっともっと、醜く汚れればいい。
そうして僕が迎えに行く頃には、地獄に相応しい魂に。
(死ぬまでは我慢してあげる。だから、もっと近くまで堕ちておいで)